ミノキシジルは、元々アメリカで降圧薬として開発されましたが、今ではフィナステリドと並ぶ薄毛治療薬の代表格として知られています。フィナステリドが薄毛の進行を食い止める「守り」の効果を発揮するのに対して、ミノキシジルの特徴は髪を太くしっかりした状態に蘇らせる「攻め」の効果です。現在、薄毛治療(AGA治療)を受けた方々が実感している効果の多くは、ミノキシジルが鍵になっていると言っても過言ではありません。
ここでは、そんな薄毛治療に欠かすことのできないミノキシジルについて、効果と副作用を中心に深掘りしていきたいと思います。
ミノキシジルとは
ミノキシジル内服薬は動脈の平滑筋を弛緩させる作用により、元々は海外で血圧を下げる薬剤として1970年代から使用されてきました。ところが、副作用として体毛を増やす作用が認められたことから、再度発毛剤として開発が進められることに。その後AGA治療薬として改めて承認され、現在に至ります。
外用薬は日本皮膚科学会が策定した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017版」[1]において推奨度「高」に指定されています。
ミノキシジルの効果
血流改善によって、毛髪をより太くハリのある状態に改善します。
毛細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制
髪にはヘアサイクルというものがあり、「成長期」「退行期」「休止期」があります。「成長期」に一定の太さに成長すると「退行期」に入ります。
「退行期」には毛細胞が萎縮して、2〜3週間程度で毛髪が抜けます。髪が抜けると、数ヵ月の「休止期」を経て、そこからまた新しい毛髪が生えてきます。これが一般的なヘアサイクルです。
ミノキシジルは髪の成長期を長くし、退行期への移行を遅らせる働きがあります。また、休止期の毛母細胞を活性化し、新しい毛髪の成長を促します。
毛細胞内に成長因子を産生する
ミノキシジルは、毛細胞内に成長因子を産生します。
成長因子とは、体内の特定の細胞の増殖・分化を促すタンパク質の総称で、頭髪における働きは毛根の細胞を増やすこと、毛髪を作る細胞への分化を促進することです。毛根周辺に血管を新生する働きもあることから、毛髪の健全な育成を後押しする効果が期待できます。
服用できないのはどんな人?
心血管系への影響が懸念されるので、高齢者や心血管系の併存疾患の方には注意して使用する必要があります(医師の判断で使用をお勧めしないことがあります)。
また、甲状腺疾患やアトピー性疾患のある方は効果が期待できないことがあるのでご留意ください。
ミノキシジルの効果がないと感じてしまうのはどんな人?
AGAの代表的な治療薬の一つですが、時に効果がないと感じてしまう方もいらっしゃいます。そうした方々は、以下のような理由でミノキシジルの効果を十分に発揮できていない可能性があります。心当たりがある方は、要注意です。
初期脱毛が生じている場合
治療を始めた直後は初期脱毛という、一時的に毛が抜ける症状がみられます。その認識がないと「治療が逆効果だった」と誤解して、治療を中断してしまう方がいらっしゃいます。
用法用量が間違っている
処方量は、各患者様のご状態に応じて医師が適正な量を指定しています。もしこれを無視して投与した場合、期待通りの効果が得られない可能性があります。
生活習慣が乱れている
健康な生活習慣は、髪の育成に好影響をもたらします。逆に喫煙や飲酒などが習慣化していると、血行不良を引き起こし、薬剤が効果を発揮する際の妨げになり得ます。また、ストレス過多は、自律神経やホルモンバランの乱れを引き起こし、同じく薬剤本来のチカラを発揮する際の妨げになりえます。生活習慣を見直し、心身のコンディションを整えることも、効果を実感する際には大事なポイントです。
個人輸入など、正規品以外を使用している
個人輸入で入手した場合、偽物や粗悪品である可能性があります。薬剤は、毛髪治療を専門に行なっているクリニックで処方してもらうようにしてください。
薄毛の原因がAGAではない
ミノキシジルは、AGAに対して効果が期待される治療薬です。もし脱毛の原因が他にあるなら、別のアプローチが必要です。万一自己判断で服用し続けているなら、まずはクリニックを受診して診断を受けてください。無駄なお金を使わず、身の安全を確保するには、それが最善だと考えます。
外用薬(塗り薬)と内服薬はどちらを選ぶべき?
ミノキシジルは、内服時、肝臓での代謝過程でスルホトランスフェラーゼという酵素の働きによって硫酸ミノキシジルに変化します[2]。このプロセスを経ることで初めて、先程ご説明した血流増加、アポトーシス(毛細胞の死)の抑制といった本来の効果を発揮します。
こうご説明すると、ミノキシジルは内服しないと効果がないのかと思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。ミノキシジルを活性化するスルホトランスフェラーゼは毛根の中にも存在しているので、外用薬(塗り薬)として使用しても十分に効果が期待できます。加えて、外用薬はすでに臨床試験が行われ国の認可も受けているので、そうした点でも安心と言えます。
効果は内服薬の方がやや勝るとの見解もありますが、国内未承認ということもあるので安全面には注意が必要です。実際の薬剤選択時にはその辺りを考慮し、医師の判断のもと、ご状況やご要望に応じて慎重に決めていくことになります。個人輸入などによる購入と使用は、成分の濃度にムラがあったり、不純物が入っていたりするのでお勧めしません。
なお、毛髪以外の体毛が濃くなるという副作用は、内服薬、外用薬のどちらにも起こり得ます。
ミノキシジルは多く服用するほど優れた効果を発揮する?
ミノキシジルは、服用量が多ければ多いほど効果を発揮するというわけではありません。1度の服用量が10mgを超えてくると血圧の低下に影響すると言われているため、服用量は状態を見ながら慎重に決めるのが望ましいと考えます。用量の調整を検討される際には、(繰り返しになりますが)毛髪治療専門の医師にご相談いただくことをお勧めします。
ミノキシジルで考えられる副作用と発生率
元々血圧を下げる薬だったこともあり、動悸、めまい、不整脈など、循環器系の副作用がみられることがあります。また外用薬を使用する場合、湿疹などの皮膚症状を生じることがあります。
外用薬(塗り薬)の副作用
直接肌に触れるので、皮膚への影響が考えられます。
副作用 | 説明 |
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湿疹 (痒み、かぶれ) |
発生頻度は2%程度ですが[3]、もしご自身の肌に合わないと感じたときは無理せず医師に相談し、継続の可否を検討してください。 |
内服薬の副作用
特に内服薬は体内に取り込まれる量が多く、代謝を行う肝臓への影響が懸念されます。
副作用 | 説明 |
---|---|
肝機能障害 | ミノキシジルは肝臓で代謝されるため、ある程度肝臓に負担がかかります。発症頻度はかなり稀ですが、元々肝疾患を患っていらっしゃる方の場合、肝障害を引き起こす可能性が高くなります。原疾患がある方は、必ず事前に申告してください。 |
外用薬(塗り薬)・内服薬に共通する副作用
降圧作用を有することから、主に循環器系への影響が考えられます。
副作用 | 説明 |
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初期脱毛 | 治療開始から2〜8週間程度の間に見られる抜け毛の症状です。服薬によって生えてきた新しい毛髪によって、「休止期」の毛髪が押し出されて抜け落ちる現象です。薬がきちんと効いている証拠なので問題ありません。 |
立ちくらみ、 めまい |
降圧作用が強く出た場合、このような症状が見られます。症状が出た場合は、必ず医師に報告してください。 |
動悸、息切れ | 降圧作用によってもたらされます。症状が出た場合は、必ず医師に報告してください。心機能障害や不整脈への進展する可能性もあるので、特に血圧が不安定な方、心疾患がある方などは事前に必ず医師に相談してください。 |
手足、 顔のむくみ |
ミノキシジルは末梢血管を拡張させます。 一過性であることがほとんどですが、長引く場合は心疾患を引き起こしている可能性があるので、早急に医師に報告してください。 |
体毛の増加 | 多毛の症状は薬が効いていることの証でもあり、大きな害はありません。ただし、あまり気になる場合は医師に相談して、治療法の変更を検討しても良いと思います。内服薬の服用時に多く見られます。 |
女性の薄毛にも使える?(女性ならではの注意点)
ミノキシジルは女性の薄毛治療にも用いることができますが、若干注意と配慮が必要です。
女性が使用する際は濃度を低く(または用量を少なく)
男性に比べて体重が軽いので、内服薬の場合は用量は少なくする必要があります。
外用薬については、低濃度であれば女性でも効果が確認できていますが、
くれぐれも男性向けの外用ミノキシジル製品は使用しないようにしてください。
妊娠・授乳中の方や妊娠の予定のある方は使用不可
妊娠・授乳中の使用で安全性は確認されていません。
もし「妊娠がわかったら中止しよう」とお考えでしたら、それもおやめください。妊娠が発覚する時期は人それぞれです。先々妊娠の計画がある方は、その点も含めて、必ず事前に医師にご相談ください。
薄毛になったからといって闇雲に使用しない
薄毛の原因が、妊娠や出産に伴うホルモンバランスの変化による場合、甲状腺の異常に起因する場合はミノキシジルの適応になりません。薄毛の原因が良くわからないなら、まずは一旦毛髪治療の専門外来にお越しいただき診断を受けてください。
服用は続けないとダメ? やめるとどうなる?
男性の通常の薄毛治療(AGA治療)は、フィナステリドとミノキシジルという2本柱で進めることが多いです。フィナステリドは髪の毛の正常な成長を阻害する男性ホルモン(DHT)を減らす働きがあり、ミノキシジルは血流を良くしたり成長因子の産生を促進したりすることで髪の毛を生やす働きがあります。ごく簡単にいうと、フィナステリドは抜け毛を抑える、ミノキシジルは毛を生やすための薬です。ですから、もし仮にミノキシジルをやめると改善効果は失われ、治療前の状態に戻ることになります。
ミノキシジルは適応を見極めて使用すべき
ミノキシジルは発毛効果を左右する重要な薬剤の一つであり、現在の薄毛治療には欠かせないものです。
ただその一方で、元々降圧薬として開発された経緯から循環器系への副作用の懸念もあるので、その剤形(外用か内服か)や用量の選択は慎重に行う必要があります。
こうしたことを考慮すると、ミノキシジルは闇雲に市販薬や個人輸入品などを使用するのではなく、まずは専門の医療機関でドクターの診断を受けることから始められるのが良いと考えます。
ミノキシジルを用いた薄毛治療に興味がおありでしたら、当院の無料カウンセリングにお越しください。薄毛治療の専門スタッフが、時間をかけてじっくりお話を伺います。
ミノキシジルのリスク・副作用 | 主にみられるものは血圧低下や心拍数の増加、頭痛やめまい、多毛症、体重増加、手足のむくみです。もし症状が辛い場合は使用を中止し、担当の医師にご相談ください。 |
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注意点・特記事項 |
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スマイルAGA処方(内服+外用) | ¥38,500~¥55,000/月 |
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